『The White Wolf』書評・感想・レビュー:【英語多読・初級】子オオカミを救え!子ども探偵たちが密猟者に挑む自然派ミステリー

『The White Wolf』レビュー|A to Z Mysteries #23(Ron Roy)

『The White Wolf』(Ron Roy)表紙画像(出典:Amazon商品ページ)

 

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「A to Z Mysteries」シリーズとは?

「A to Z Mysteries」シリーズは、アメリカの小さな町を舞台に、3人の子ども探偵たち──ダンク、ジョシュ、ルース・ローズ──が身の回りの謎に挑んでいく英文児童書。読みやすくテンポのよい文章で、推理と日常のワクワクが詰まった物語が展開される。シリーズは大きく2つに分かれている。

A to Z Mysteries:アルファベットのAからZまで、全26冊で構成された初期シリーズ(対象年齢 6~9歳) 🔎 今回の巻
A to Z Mysteries: Super Edition:長めの文章量で、読みごたえのある続編シリーズ(対象年齢 6~9歳

どの巻も1話完結型で、どこから読んでも楽しめる構成になっており、大人の英語学習にもおすすめのシリーズだ。

なお、関連シリーズとしては── A to Z Animal Mysteries(動物がテーマの新シリーズ)、Calendar Mysteries(本家3人の弟妹が主人公)、Capital Mysteries(ワシントンD.C.を舞台に謎を追う)──などが刊行されている。いずれも文章量や難易度は A to Z 本編と同程度かやや易しめなので、英語多読の次の一冊におすすめだ。

 

 

『The White Wolf』を読んで

 

アメリカの game warden(猟区管理官)とは?

物語の感想に入る前に、本作に登場する「game warden(猟区管理官)」について少し説明しておきたい。

game warden とは、野生動物の保護と狩猟規制の執行を担う監視官のこと。アメリカでは通常、各州により任命され、密猟(poaching)の取り締まり、ハンターのライセンス確認、野生動物に関わる緊急対応などを行っている。任務は広範にわたり、自然保護と持続可能な狩猟・アウトドア活動のバランスを図るのが役割だ。

なお、この文脈における単語の意味を簡単に補足すると:

game:狩猟対象となる野生動物(例:シカ、エルク、鳥類など)
warden:保護官・監視官。資源保護と法律執行を任務とする公務員

 

物語の序盤では、子どもたちがメイン州のアーカディア国立公園(英語:Acadia National Park/発音は「アケイディア」が近い)で、野生の子オオカミが何者かに連れ去られる現場を偶然目撃する。このような行為は、現実世界では明確に「密猟」にあたる違法行為であり、法的な取り締まりの対象となる。

子どもたちは推理と観察を通じて、犯人の手がかりを一つずつ突き止めていく。俯瞰して見ると、本作は「市民による自然保護当局への協力」を描いた物語とも言えるだろう。

 

 

物語の展開と見どころ

物語は、3人の主人公(ダンク、ジョシュ、ルース・ローズ)が、水上飛行機でメイン州のアーカディア国立公園へ向かう場面から始まる。飛行機から見下ろす風景の描写とともに、読者の旅情感も高まり、ワクワクする導入だ。

マウント・デザート島の港に到着した3人は、知人のワリスおばさん(Wallis)と再会。彼女の養子で、車いすの少女アビー(Abbi)とも初めて顔を合わせる。こうして4人の “子ども探偵チーム” が編成され、島での物語が本格的に動き出す。

アビーによれば、この島には野生のオオカミがいるという。一行はキャビンに向かい、望遠鏡で自然を観察していたところ、大きな白い親オオカミと3匹の子オオカミを発見。ところがその後、アビーが望遠鏡越しに、子オオカミたちが何者かによって連れ去られる場面を目撃してしまう。

すぐにワリスが警察へ連絡し、game warden(猟区管理官)が駆けつける。猟区管理官は、国立公園内で野生動物を捕獲するのは違法行為であると説明する。ここから子どもたちは、犯人の特徴や現場の状況を手がかりに、独自に調査を始めていく。

 

まず印象的だったのは、児童書ながら、意外と丁寧に「捜査」の過程が描かれていることだ。

推理し、現場を観察し、証拠を拾い集めていくという地道な展開があり、読んでいて素直に面白い。物語にはさりげない伏線も張られていて、対象年齢「6歳から」とは思えないほど、児童書としては意外と本格的な構成になっている。

特に終盤で明かされる “ある証拠” は、オオカミの習性と関係しており、「なるほど!」と声が出るような豆知識がストーリーの中で生きてくる、印象に残るシーンだった。

 

また、読み進めるうちに、アーカディア国立公園の自然の風景がじわじわと立ち上がってくるのもこの作品の魅力だ。

水上飛行機から見下ろした島々、木々に囲まれた岩場を歩くトレッキング、そしてボートでの移動。読者自身も一緒に移動し、観察しているような気分になり、読み終えたときにはどこか旅を終えたあとのような静かな感傷が残る。

特に、水上飛行機ボートといった乗り物は、北米の一部地域では実際に日常の交通手段として使われており、物語からその雰囲気も感じ取ることができる。

 

本作で描かれる “子オオカミの密猟事件” は、あくまで児童向けのストーリーではあるものの、アメリカの自然保護や猟区管理の世界に関心を持つ入り口としても興味深い。

実際、アメリカでは密猟や野生動物保護を扱った書籍やドラマも多く、たとえばC・J・ボックスによる〈猟区管理官ジョー・ピケット〉シリーズは、猟区管理官を主人公にした大人向けの人気長編として、翻訳書・テレビドラマともに一定の支持を集めている。ほかにも、猟区管理官の仕事を紹介する専門誌が存在するなど、野生動物と人間の関係は、アメリカにおける社会的・文化的な関心事のひとつでもある。

 

『The White Wolf』は、英語初級者でも手に取りやすいシンプルな文体でありながら、自然観察・捜査・冒険が交差する、想像以上に“中身の詰まった”一冊だ。

英語表現の面では、水上飛行機・車・ボートなどの乗り物に関する語彙、オオカミをはじめとした動物の描写森の風景や植物など、自然系の語彙が豊富に登場する。

次章では、そうした印象的な英単語の一部を紹介しているので、英語学習の参考にしていただければと思う。

 

『The White Wolf』(Ron Roy)表紙画像(出典:Amazon商品ページ)

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本書に出てきた印象的な語句

本書に登場する語句(英単語・表現など)のうち、印象に残ったものを以下にリスト化した。「どんな語彙が出てくるか」の参考程度にご覧いただきたい。

(※訳語は、辞書やネットなどをもとに、本書で使われていた意味に近いものを優先して、個人的に抜粋したものである。正確な意味は、必ずご自身で確認していただきたい。)

 

🔍乗り物に関する語句

• seaplane:水上飛行機
• airborne:空中にいる/ある、飛行中の
• zoom down:急降下する
• level off:(飛行機が)水平飛行をする、水平になる、横ばいになる
• pontoon:水上飛行機のフロート(※水上飛行機が水面に浮かぶための浮き部分)
• taxi:(航空機が)地上走行する、陸上(誘導路)をゆっくり進む、(航空機に)地上走行させる、タクシー
• toot:ホーンの鳴り響く音、警笛を鳴らす(※toot a car horn:車のクラクションを鳴らす)
• buckle up:シートベルトを締める
• pull off :車を道路脇に寄せて停める、成功する(※pull off the road onto:路肩や駐車場、私道など、道路以外の場所に車を移動させる際に使われる)
The driver pulled off the road onto a side street. (運転手は道路から脇道に車を移動させた。)
• pull up:(車などを)止める(※車を道路端に寄せて停車させる、埠頭に近づいて停まる)
• pull away:(ボートが)(岸などを)離れる、発車して離れて行く
• swing by:(目的地に行く途中で)~に立ち寄る、~に寄り道をする
• chug:(ボート・機関車などが)ダダダと音を立てる、ダダダと音を立てながら進む
• gun:(エンジンを)全開にする、銃(※gun one’s engine:エンジンを吹かす)
• bow:船首、弓、お辞儀をする

 

🔍動物・自然に関する語句

• lair:(動物の)巣、穴、(秘密の)隠れ家
• burrow:巣穴、穴を掘る
• den:巣穴、隠れ家
• pack:(動物の)群れ(※a pack of wolves:オオカミの群れ )
• cub:(クマやオオカミなどの肉食獣の)幼獣、子
• pup:子犬や幼獣
• animal tracks:動物の足跡
• pawprints:動物の足跡
• howl:遠ぼえ、遠吠えをする
• sniff:匂いを嗅ぐ
• prowl:徘徊する
• soar:空高く上昇する,舞い上がる
The eagle soared high in the sky. (ワシが空高く舞い上がった。)
• swoop:さっと舞い降りる、急降下する
Suddenly a seagull swooped down and stole my sandwich. (突然カモメが急降下してきて、私のサンドイッチを盗みました。)
• squawk:(耳障りなやかましい)音を立てる、(うるさい)わめき声、叫び声
• whimper:(犬が)クンクン鳴く、シクシク泣く、(子どもが)すすり泣く
• scamper:(子供や動物などが)駆け回る、ちょこまかと走る
• plump:丸々とした、ふっくらとした
• cuddle:抱き締める、体を擦り寄せる
• rodent:げっ歯類(※ネズミ、リス、ハムスターなど)

• boulder:大きな石、岩
• slab:厚板(※rock slab:岩の板、岩盤)
• foothold:(岩場などの)足がかり、足場
• shrubbery:低木の茂み、植え込み
• bark:樹皮
• twig:小枝
• level:平坦な、水平の(※The field was flat and level. (その畑は平らで水平だった)、The table is level. (テーブルは水平だ))

 

🔍その他の語句

• clue:手がかり
• spina bifida:二分脊椎(にぶんせきつい)(※脊椎(背骨)が完全に形成されずに、背骨の一部が開いた状態になる先天的な疾患)
• telescope:望遠鏡
• flashlight:懐中電灯
• awning:日よけ、雨おおい
• ramp:斜面 、傾斜台
• bunk:二段ベッド、寝台
• cot:折り畳み式ベッド
• tear:急ぐ、慌てる(※tear around the corner:急いで角を曲がる)
The kids teared around the corner playing tag. (子供たちは鬼ごっこをして角を勢いよく曲がった。)
• train:〔カメラ・銃・ライトなどを〕向ける、電車、訓練する
Train your gun on the target. (銃を標的に向けてください。)
He trained his eyes on the distant mountains. (彼は遠くの山に視線を向けた。)

 

『The White Wolf』(Ron Roy)表紙画像(出典:Amazon商品ページ)

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