『Grand Theft Auto V』(グランド・セフト・オートV/GTA5)(Rockstar Games/2013年[原作]・2022年[PS5版])

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
💡 『Grand Theft Auto V』(グランド・セフト・オートV/GTA5)とは?
発売年:2013年(※本記事では2022年に発売されたPS5版をプレイ)
舞台:架空の都市「ロスサントス」とその周辺地域──ロサンゼルスや南カリフォルニア一帯をモデルにした広大なオープンワールド
特徴:マイケル、フランクリン、トレバーという3人の主人公を切り替えながら、強盗、逃走、銃撃戦、裏社会の仕事などを進めていく犯罪アクションゲーム。都市部、郊外、砂漠、山岳地帯まで含む広大なマップが特徴。
プレイ感覚:車やバイクでの移動、徒歩での探索、昼夜や天候の変化、町に暮らす人々の動きなどが細かく描かれ、ミッションを離れて街を歩くだけでも独特の没入感がある。
PS5版:2022年にPS5/Xbox Series X|S向けに発売。グラフィックや読み込み、パフォーマンス面が強化され、ロスサントスの風景をより滑らかに楽しめる。
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いつもなら通り過ぎる町外れへ
アメリカの寂れた路地や町角には、独特の魅力がある。
ゴミの残る路地裏。
舗装が剥がれた狭い通り。
色あせた看板が残る商店街。
砂ぼこりの舞う町外れの道。
それらは普段なら見過ごされる風景なのに、アメリカの無骨なクールさや、くたびれた日常だけが持つ哀愁、そして微かな旅情を静かにまとっている。
そこには、産業の衰退や、中心街の空洞化、取り残された地域の停滞といった、アメリカ各地がたどってきた時間の跡が刻まれている。
こうした風景は、映画や小説、写真集、音楽の中でも繰り返し描かれ、いまでは “もうひとつのアメリカ” として、多くの人の記憶に残っているのではないだろうか。
今回は、そうしたアメリカの寂れた町角の魅力に、ゲーム『GTA5』の中でゆっくりと身を浸してみたい。
『Grand Theft Auto V(グランド・セフト・オートV/GTA5)』は、ロサンゼルス周辺を思わせる架空都市ロスサントスを舞台にした、犯罪アクション色の強いオープンワールドゲームだ。
しかしその広大なマップには、ミッションとは無関係に、ただ歩き、眺めたくなるような町の片隅が数多く残されている。
この記事では、ロスサントス南部のランチョ(Rancho)をモデルケースとして、そうした路地や町角をいくつか取り上げていく。
普通に遊んでいると、こうした場所は一瞬で通り過ぎてしまう背景に過ぎない。
けれど、壁の落書きや、荒れた舗装、色あせた看板に目を向けてみると、そこには町外れを歩いているような、静かな空気が確かに流れている。
すでにプレイした人も、今回は少しだけスピードを落として、いつもなら見過ごしてしまう場所をゆったりと眺めてみてほしい。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
また、この記事では「写真を撮るように風景を見る」ことも、大きな切り口にしている。
アメリカの寂れた町角は、観光地ではないにもかかわらず、写真家たちが長く見つめてきた風景でもある。
何気ない路地や町外れに、時間や孤独、生活の痕跡を見出してきたのだ。
『GTA5』の世界観が好きな人には、この記事を写真集の世界へ入る小さな入口として。
写真が好きな人には、なかなか行けないアメリカの町外れを、ゲームの中で歩き、眺め、撮る旅として。
そんなふうに楽しんでもらえたらうれしい。

William Eggleston『The Outlands Selected Works』(2022)より。雑草の伸びた歩道や古びた看板に、アメリカの寂れた町角ならではの空気が漂う。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© William Eggleston
ランチョ周辺を歩く──商店街、路地裏、モーテルの風景
くたびれた商店街に、生活の“記号”を見る
それでは、ゲームの主人公の一人フランクリンが住むエリアにほど近い「ランチョ(Rancho)」の一角をじっくりと見ていこう。
ロスサントス南部らしい、低層の住宅や小さな商店が並ぶ、どこかくたびれた日常の空気が漂っているエリアだ。
下の画像を見てほしい。食料品店などが並ぶ、ありふれた町の一角を切り取ったものだ。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
通常のプレイであれば、車で一瞬にして通り過ぎてしまうような場所だろう。
しかし、歩みを止めてじっくりと観察してみると、この周辺の「廃れ具合」には、えも言われぬ味わいがある。
まず目を引くのは、画面中央に佇むグローサリー(食料品店)だ。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
正面に近づいてみると、日差しに焼かれた赤い看板、くすんだ外壁、コンクリートの隙間から伸びる雑草が見えてくる。
アメリカの都市の外れや郊外の片隅に残る、小さな個人商店の風情がよく出ている。
その隣へ視線を移すと、通りの空気はさらにざらついてくる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
並んでいるのは、酒屋や「No Credit Check(信用審査なし)」の看板を掲げた金融店。
剥がれた舗装、路地の隅に転がるゴミ、くすんだ壁、店先を覆う物々しい鉄格子。
それらは単なる背景ではなく、この一帯の生活環境や経済的な厳しさを、さりげなく伝える“記号”のようにも見えてくる。
さらに通りの向こうへ視線を移すと、商店街とはまた違う、住宅地側の表情が見えてくる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
グラフィティの残る車庫、割れた舗装や散らばったゴミ、そしてわずかに斜めに傾いた電信柱。
雨上がりの路面には大きな水たまりが残り、町の荒れた質感をより生々しく浮かび上がらせている。
その車庫に近づいてみると、壁面の傷みや落書きの重なりが、さらに強い存在感を持って見えてくる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
引きで見ると住宅地の一部にすぎない場所でも、近づいてみると、汚れた壁や落書きの跡が、町の時間をそのまま刻み込んでいるように見える。
ここには、観光地でも中心街でもない、ロスサントス南部の剥き出しの日常が横たわっている。
▼ この風景と響き合う写真集より

William Eggleston『The Outlands Selected Works』(2022)より。色鮮やかな看板と小さな食料品店に、アメリカ南部の町角の生活感がにじむ。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© William Eggleston

Jeff Brouws『Approaching Nowhere』(2006)より。雨上がりの水たまりと、静まり返った町角。寂れた都市の“生々しい質感”が強く残る一枚。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Jeff Brouws
写真を撮るように、酒屋の一角を眺める
商店側に戻って、今度は酒屋の一角を眺めてみたい。
ここはランチョ周辺の中でも、かなり「撮りたくなる」風景が詰まった場所だと思う。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
縦に伸びる「LIQUOR」の看板、古びた「BEER & WINE」の文字、くすんだ壁面、店先を覆う鉄格子。さらに奥には、薄く煙を吐く煙突まで見える。
派手な名所ではないのに、この一角だけで、アメリカの町外れにある酒屋特有の渋さが立ち上がってくる。
面白いのは、同じ場所でも、時間帯や天気が変わるだけでかなり印象が変わることだ。
昼間に真正面から見ると、空の青さと白い雲を背景に、縦長の看板がすっと浮かび上がる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
この時間帯は、建物のくたびれた質感よりも、看板の形や文字の強さが前に出てくる。
特に「LIQUOR」の縦看板と「BEER & WINE」の横文字が交差する感じが印象的で、いかにもアメリカの町角らしい空気を作り出している。
一方、空が曇ると、同じ構図でも雰囲気は少し沈む。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
光が弱まることで、建物全体の色が抑えられ、酒屋の前にある鉄格子やくすんだ壁がより目立ってくる。
晴れた昼間の乾いた明るさとは違って、ここでは少し冷えたような、無愛想な町角の表情が出ている。
夕方になると、さらに別の空気が漂い始める。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
斜めに差す光が壁や看板に触れ、昼間には見えにくかった影が少しずつ濃くなる。
古びた酒屋の看板、淡く染まる空、奥に立つ煙突の気配。同じ場所なのに、少しだけ寂しさが増して見えるのが面白い。
そして夜になると、この一角は一気に表情を変える。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
暗闇の中で「LIQUOR」と「BEER & WINE」の文字が光り、昼間には背景の一部だった看板が、急に主役のように浮かび上がる。
雲がうっすら残る夜(1枚目)と、星空が広がる夜(2枚目)では、同じネオンの風景でも印象が少し違う。
前者には湿った夜の重さがあり、後者にはどこか乾いた静けさがある。
こういう変化を見ていると、『GTA5』の町を歩く面白さは、単に「場所を見つける」ことだけではないと感じる。
同じ場所に何度も立ち、眺め直すことで、風景の表情が少しずつ変わっていくのだ。
さらに、画面の中に車を入れてみるだけでも印象は変わる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
古びた車体が手前に入ると、酒屋の看板だけを見ていたときよりも、ロードサイドの空気がぐっと濃くなる。
古い車、酒屋の看板、パームツリー、奥に見える産業施設の気配。
それらが重なることで、いかにもアメリカの町外れらしい風景になってくる。
人が通る瞬間を待つのも面白い。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
人物が一人入るだけで、風景は単なる建物の記録ではなく、そこに生活が流れている場所として立ち上がる。
現実で同じ町角の表情の変化を追おうとすれば、何時間もそこに居続けることになる。
その点、ゲームの中では時間の流れが早く、光や人通りの変化をずっと気軽に味わえる。
距離や角度を変え、ときには車や人物を画面に入れてみるだけで、何気ない酒屋の一角も、思った以上に豊かな表情を見せてくれる。
『GTA5』の町歩きには、現実のスナップ撮影を小さくシミュレーションするような楽しさがあるのだ。
▼ この風景と響き合う写真集より

Jeff Brouws『Approaching Nowhere』(2006)より。色あせた看板と静かな車の佇まいが、アメリカの町外れに流れる時間を静かに映し出す。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Jeff Brouws
路地裏、モーテル、壁面──生活の裏側へ
商店街の通りから少し奥へ入ると、ランチョの表情はさらに荒くなる。
ここからは、路地裏やモーテル、壁面などをアトランダムに眺めていきたい。
まずは、このエリアらしさがよく出た路地裏。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
トタンの塀に描かれたグラフィティ、散乱したゴミ、頭上を走る電線。
何気ない裏道だが、こうした場所にこそランチョのくたびれた空気が濃く漂っている。
同じ路地をほんの少し進むだけで、また違った表情が現れる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
路面には大きな亀裂が走り、塀は歪み、雑草が隙間から伸びている。
舗装や建物の傷み方を見ているだけで、この地域に積み重なってきた時間がじわりと伝わってくる。
雨が降ると、こうした路地の空気もまた変わってくる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
濡れた路面に水たまりが残り、散らばったゴミや雑草、くすんだ壁の汚れが、より生々しく浮かび上がる。
乾いた町角とは違う、湿った寂れの表情がここにはある。
周囲のガレージや建物も印象深い。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
グラフィティの残るシャッター、鉄格子の窓、錆びたトタン、白いプラスチック椅子。
どれも派手ではないが、生活感と寂れ感が入り混じり、このエリア特有の空気を静かに形作っている。
少し歩くと、モーテルの風景も見えてくる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
「MOTEL」とだけ書かれた大きな看板。
必要最低限の機能だけを残したような簡素な建物が、アメリカの町外れにある安モーテル特有の空気を醸し出している。
そこに人物が入ると、風景はさらに味わい深くなる。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
建物の壁にもたれ、煙を吸いながら時間をつぶす男性。
遠くには煙突の煙も見え、何も起きない午後の空気がしみじみと伝わってくる。
さらに歩くと、壁面そのものがおもしろい場所にも出会う。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
色あせた文字、剥がれたポスター、グラフィティ、汚れた塀。
引いて見るとただの壁でも、近づくと色や傷み、影の落ち方が重なり、一枚の絵のような表情を見せてくれる。
最後に、建物裏の壁面も見ておきたい。

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games

『Grand Theft Auto V』PS5版より。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Rockstar Games
赤茶けた壁、白く乾いた地面、鉄格子の扉、ゴミ袋、ダクト、強い日差しが作る影。
一枚目の画像では建物裏らしい雑多な空気が漂い、さらに寄った次の画像では、壁の色や光と影のコントラストがより際立って見えてくる。
汚れた場所ではある。
けれど距離を変えて眺めると、壁の色や影の形、物の配置が思いのほか美しく見える瞬間がある。
『GTA5』の町角は、ただ荒れているだけではなく、写真を撮るように歩くことで、少しずつ豊かな表情を見せてくれるのだ。
▼ この風景と響き合う写真集より

Julia Reyes Taubman『Detroit: 138 Square Miles』(2015)より。荒れた庭や静まり返った家並みに、アメリカの町外れに残された生活の痕跡がにじむ。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Julia Reyes Taubman

Stephen Shore『Uncommon Places』(1982)より。剥がれた壁や乾いた地面に、町外れの建物がまとった時間の蓄積が刻まれている。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Stephen Shore
写真を撮るように、旅をするように『GTA5』を歩く
ここからは、『GTA5』の町角をゆっくり歩きながら楽しむための、ちょっとした遊び方や視点をまとめておきたい。
■撮影ポイントを探すことが、旅の小さな目的になる
『GTA5』のマップは広大だ。
ただ、普通に遊んでいると、ミッションや目的地を追うことが中心になり、マップの隅々まで静かに歩いて回る理由は意外と少ない。
そこで面白くなるのが、「撮影ポイントを探す」という遊び方だ。
看板、路地裏、壁面、駐車場、モーテル、車、人の動き、光の差し方。
そうしたものが、自分だけの小さな探索対象になっていく。
ゲーム側が用意した収集アイテムではなく、自分の視線が見つける“撮影ポイント”が、町歩きにささやかな目的を与えてくれるのだ。
■写真集を見ると、探すものが増えていく
この楽しみ方は、写真集を見ているとさらに広がっていく。
優れた写真家の作品を見ていると、何を「撮りたい風景」として見るかが少しずつ変わってくるからだ。
以前なら通り過ぎていたかもしれない壁、剥がれた看板、駐車場の隅、安い商店の外壁、何でもない交差点。
そうしたものが、ある日ふと「撮ってみたい場所」として目に入るようになる。
ゲーム的に言えば、自分の中で、マップ内に探すアイテムが増えていくような感覚に近い。
開発者が新しい要素を追加しなくても、自分の見る目が変わることで、同じマップの中に新しい発見が増えていく。

Stephen Shore『Uncommon Places』(1982)より。一見すると何でもない道路脇の風景だが、電柱や看板、空の広がりに独特の味わいが宿っている。作品紹介のために引用・縮小して掲載。© Stephen Shore
■徒歩で歩くと、町の細部が見えてくる
『GTA5』は犯罪アクションのイメージが強いが、普通に歩いている範囲であれば静かに探索できる。
車を降りてゆっくりと歩いてみると、壁の汚れ、路面のひび、看板、人の動きなど、これまで背景だったものが少しずつ見えてくる。
目的地へ急がずに歩くことで、ロスサントスの町角の静かな余韻を味わいたい。
■不便な撮影だからこそ、立ち位置を探すのが楽しい
『GTA5』にはスマホ撮影機能はあるが、本格的なフォトモードのように自由自在ではない。
僕自身は、一人称視点で、ミニマップを消して見た風景を撮っている。
ただ、この不便さが逆に、実際のスナップ写真を撮っているようで妙に楽しい。
しゃがんだり、車の上に乗ったり、建物に登ったりするだけでも、同じ場所の見え方はかなり変わる。
■現実では入りにくい場所にも、気軽に入り込める
ゲームならではの面白さは、現実なら入りにくい場所にも気軽に踏み込めることだ。
建物の裏手、敷地の奥、屋上、人気のない路地、フェンスの向こう側。
都市や田舎の裏通りに、アーバンエクスプローラーのように入り込んでいく感覚。
そこには、観光地をめぐる旅とは違う、少し後ろめたく、少しわくわくする探索感と、新鮮な撮影ポイントがある。
■移動手段を変えると、旅情も変わる
移動は、車と徒歩が基本になる。
ただ、移動手段を変えてみると、町の見え方も変わってくる。
ヘリコプターなら、道路や住宅地、工業地帯のつながりを上から眺められる。
船なら海側からロスサントスの輪郭が見える。
けれど個人的に楽しいのは、あえて少しくたびれたアメ車で町を流すことだ。
便利さだけならヘリの方が上だが、車でゆっくり走り、気になる場所で降りて写真を撮る方が、ロードトリップと町歩きの両方を味わい深く楽しめる。
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『GTA5』の町角から、アメリカ写真集の世界へ
『GTA5』で描かれた町角の細部には、現実のアメリカ写真にも通じる空気がある。
色あせた看板、荒れた舗装、何気ない商店やモーテル、光の差す壁面。
こうした風景は、アメリカの写真家たちも長く見つめてきた。
ここでは、今回の記事の世界観に近いものとして、文中で写真を引用した写真集をいくつか紹介したい。
William Eggleston 『The Outlands: Selected Works』
ウィリアム・エグルストンは、アメリカ南部の何気ない町角や室内、看板、車、人物、生活の断片を、鮮やかなカラー写真で切り取ってきた写真家である。
『The Outlands: Selected Works』は、南部の町や郊外に漂う、雑然としていて、どこか湿った生活感のある風景を収めた大判写真集だ。
今回のランチョ周辺の風景ともっとも感触が近いのは、この写真集かもしれない。
酒屋、古びた看板、路面の汚れ、何気ない商店や住宅地の空気。場所は南部だが、写真に漂う「生活の色」と「くたびれた町角の気配」は、ロスサントス南部の寂れた日常ともよく響き合う。
派手な絶景ではなく、見過ごされがちな町の表面に残る色や空気を味わいたい人には、かなりおすすめしたい一冊である。
▶ William Eggleston 写真集『The Outlands: Selected Works』(Amazonで見る)
Stephen Shore 『Uncommon Places』
スティーブン・ショアは、アメリカ各地のロードサイド、町角、モーテル、駐車場、交差点、食堂などを、淡々としながらも緻密な視線で撮影してきた写真家である。
『Uncommon Places』は、アメリカの何でもない場所を、独特の距離感と構図で見せる代表的な写真集として知られている。
この本には、すっきりと整った画面の美しさがある一方で、どこか寂れた町や、旅の途中でふと目に入るようなロードサイドの寂寥感もある。
『GTA5』の町角を歩いていて、看板、道路、建物、車、空の広がりが一つの風景として見えてくる瞬間があるなら、それはショアの写真を見る感覚にも少し通じている。
ロスサントスを「ゲームの街」ではなく、「アメリカの風景」として眺めたい人に、ぜひ触れてほしい写真集である(レビュー記事)。
▶ Stephen Shore 写真集『Uncommon Places』(Amazonで見る)
Jeff Brouws 『Approaching Nowhere』
Jeff Brouws は、アメリカのロードサイド、産業地帯、鉄道沿い、郊外の商業風景、古い看板やモーテルなどを撮影してきた写真家である。
『Approaching Nowhere』には、華やかな観光地ではなく、町外れや幹線道路沿いに広がる、どこか取り残されたようなアメリカの風景が収められている。
今回の記事で見たランチョの酒屋やモーテル、くたびれた看板の風景は、この本のロードサイド感とも相性がいい。
エグルストンが生活の雑味や色の濃さを感じさせるなら、Brouws はもう少し距離を置いて、アメリカの周縁にある看板、道、建物、空き地を静かに見せてくれる。
『GTA5』の中で、町外れの道路や古びた商業施設に惹かれる人には、かなり響く写真集だと思う。
▶ Jeff Brouws 写真集『Approaching Nowhere』(Amazonで見る)
Julia Reyes Taubman 『Detroit: 138 Square Miles』
Julia Reyes Taubmanの『Detroit: 138 Square Miles』は、デトロイトという都市を、膨大な写真とともに見つめた分厚い写真集である。
荒廃した建物だけでなく、住宅地、商業地、空き地、教会、学校、産業の跡、人々の暮らしの気配まで、都市全体を歩き回るように構成されている。
今回の『GTA5』記事とのつながりで言えば、この写真集は「オープンワールド的な写真集」として非常に面白い。
一枚一枚の写真を見るだけでなく、ページをめくりながらデトロイトのさまざまな場所を移動していく感覚がある。そこには、アメリカの寂れた都市をじっくり探索しているような厚みがある。
ランチョ周辺を歩くように眺めたあとでこの本を見ると、ゲームの中の町角と、現実のアメリカ都市が持つ複雑な時間の層が、どこか重なって感じられるかもしれない。
▶ Julia Reyes Taubman 写真集『Detroit: 138 Square Miles』(Amazonで見る)
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